『 歳末 ! ― (2) ― 』
「 ただいま ・・・ フランソワーズ、買い物してきたぞ
」
アルベルトは 珍しく玄関からキッチンに直接回った。
「 お帰りなさい。 あら ありがとう〜〜 助かったわ。
買い物当番のジェットもジョーも まだ帰ってこないのよ
」
「 そんなことだろうと思ってた。 重いものを中心に買ってきた。 」
ずん。 彼は膨らんだレジ袋を差し出した。
「 あら ジャガイモにミカン、リンゴ ・・・ タマネギも!
ありがとう〜〜 ふふふ〜〜〜 じゃ ランチにポテト・グラタンでも
作りましょうか 」
「 お。 いいな。 あ〜〜 ちょいと掃除でもしようか ? 」
「 あらあら いいわよ、そんな。 今週の掃除はジェットが担当だから。
ちゃんとやってもらわないと困るもの 」
「 ふん ・・・ ヤツは? 」
「 なんとかってパーツを買いに行くって。 一応メールは来たわ 」
「 秋葉原とか 行ったのか 」
「 さあ ・・・ ただねえ < 飛んで > 行ったみたい 」
「 ! もう〜〜〜 帰ってきたら屋根とテラスの掃除だっ 」
「 ふふふ 高いところ スキだからいいわよ
」
「 ここの屋根は広いからな〜〜 掃除のし甲斐もあるだろさ。
あ 掃除道具と洗剤は 」
「 あ〜〜 地下のロフトに買い置きがあるわ。 雑巾も使ってって言ってね 」
「 了解。 俺が監督する 」
「 うふふ・・・ おねがいします 」
「 任せて置け。 あ あ〜〜〜 あの その ・・・ 年末だが 」
「 はい?
」
珍しくもアルベルトが口ごもっている。
フランソワ―ズは 大きな目をますます見開き じ〜〜〜っと見つめた。
「 その・・・ ナンだな 〜〜 年末には この国ではいろいろ・・・
習慣があるんだろう? 」
「 え? ああ そうみたいね 」
「 う うん それで その。 二ホンには必須のモノがあるだろ。 」
「 必須のもの? ・・・ ああ お正月に? 」
「 そ そう! エ〜ト それを だな 」
「 ああ いろいろあるけど 今年はパスしようかな〜〜って思って 」
「 パス?? いや ! それはよくないぞ。 」
「 そう? でも〜〜 わたし達 二ホン人じゃないし。
クリスマスをしっかりやれば あとは 皆でリラックスして過ごせれば
いいんじゃない ? 」
「 いや! 正月は必要だ。 」
「 ・・・? どうしたの アルベルト。 なにか拘りがあるの? 」
「 え?? ・・・ あ〜〜〜 いや そういうワケじゃないんだ。
ただ そのう〜〜 ・・・ あ! そうだ!
今年はせっかくこの国で新年を迎えるのだから そのう〜〜 たまには
この国の伝統文化に染まってもいいか と思って 」
「 そうねえ ・・ この国は新年を迎えるためにいろいろな面白い
風習があるわよね 」
「 そうなんだ! だから その〜〜 それを経験してみるのもいいかな と
思って だな 」
「 ああ そういうこと・・・ そうね〜〜〜 お節料理とか ね 」
「 そう そう! それに だな〜〜 暮れのうちに準備したりするじゃないか 」
「 そうなの? あ お節料理はね 大人が作ってくれるから安心して。
ちゃんと手作りのお料理を特製お重に詰めてもらうことにするの。 」
「 それはいいな。 で そのお節料理といえば 欠かせないのが 」
「 あ! かまぼこ とか だてまき とか? 安心して ちゃんと詰めてもらうから 」
「 う〜〜〜 その < おじゅう > の中身じゃなくて だな〜〜〜 」
「 ? ・・・ あ お雑煮? 」
「 そう! その中身に入れるモノがあるだろ? 」
「 ああ・・・柚子はねえ ウチの庭のを使うわ とてもいい香なの 」
「 う ・・・ 柚子 か。 そのぅ〜〜 主役になるヤツ を 」
「 主役? ああ ウチは関東風の澄まし雑煮よ。 あ 関西風とか
え〜と 白味噌味とかがよかった? 」
「 ・・・ どっちでも ・・・ で その真ん中にあるヤツなんだが 」
「 あ〜〜 お餅のこと? 安心して。 パック詰めのを大量に届けてもらう予定よ。
皆でた〜〜〜くさん食べてね 」
「 パック詰め ・・・ だと? 」
「 そ。 新鮮だしオイシイし。 始末も簡単よ 」
「 いかん。 」
「 は?? なにが 」
「 ウチでは 伝統文化を継承したい、と思う。せっかくこういう国にいるのだからな。 」
「 でんとうぶんか? 」
「 そうだ。 もちつき だ。 餅つきをすることにした。 ウチの庭先なら
大勢で盛り上がれる 」
「 は? ・・・ もちつき ですって?? 」
「 そうだ。 商店街の米屋のダンナと話をつけてきた。 」
「 話 ・・・って? 」
「 餅つきの、 さ。 ウス とか キネ を 借りる約束をした。
モチゴメ も 米屋のご隠居に頼んだ。
やり方はレクチュアしてもらう約束をしたし ネットでも検索できる 」
「 ちょ ・ ちょっとぉ〜〜 どういうことよ?? 」
「 大丈夫、力仕事だが ジェロニモ Jr. と 俺が引き受ける。
< 捏ね役 > が必要だが 地元民のジョーにやらせる。
搗き上がった餅は 大人に餡コロ餅 や カラミ餅にしてもらう。
君は 温かくしてみておいで 」
「 ・・・ あら わたし、 見学 なの? 」
「 うむ。 ここは我々に任せてくれ。 」
「 いいけど ― 」
「 ありがとう。 実はな〜〜 地元のヒトたちも参加してもらって
こう〜〜 わいわい楽しんでもいいか と思ってな 」
「 それはいいわね〜〜 商店街の方たちにはお世話になっているし・・・
地域のヒト達も楽しんでくれれば 」
「 うん そう思ってな。 この国でも昨今は見当たらないらしい 」
「 モチツキが? 」
「 うむ。 ああ それと あ〜〜〜 ほら アレも俺達に任せてくれ 」
「 アレ?? アレってなあに 」
「 う ・・・ そのう〜〜 クリスマス・ツリー みたいな アレだ 」
「 ??? あ〜〜 〆飾りのこと? 」
「 あ それもあるが。 ほれ アレだよ 〜 」
「 ― もしかして かどまつ のことを言いたいの? 」
「 ・・・ そう だ 」
珍しくも蚊の鳴くよ〜な声での返答に フランソワーズはふか〜〜く頷いた。
「 また アレを飾りたいわけ? わたし あの騒ぎはもう二度とごめんよ? 」
「 わかっている。 だからこそ ― 飾りたい。 」
「 ふ〜〜ん ・・・ ふつ〜に穏やかにするなら どうぞ。
反対なんかしません。 むしろお願いしたいわ。 」
「 わかった。
平穏に普通に やる。 」
「 そうですか。 」
「 安心してくれ。 地元で材料を調達し地元のプロに手助けしてもらう。 」
「 はい それなら結構です。 」
「 よかった! じゃあ 任せてくれるか 」
「 はい おねがいします。 わたしもこの土地で暮らすのですから
伝統文化を正しく継承したいと思います。 」
「 同感だ。 ジェロニモ Jr. と しっかり協力してやる。 」
「 それなら安心ね。 ・・・ ジェットは? 」
「 アイツにはまだ知らせていない。 掃除部隊に専念させる。 」
「 そうね〜〜 屋根とテラスの他に窓拭きとか高い場所を頼みたいわ。 」
「 適役だ。 それも帰宅したら早速指示しよう。 」
「 そちらもお願いね。 ― ただし 揉め事はやめてよね 」
「 わかっている。 ジョーのヤツも監視役につけよう 」
「 いいわね〜〜 これで掃除問題もクリア〜 ♪ 」
「 新年、すっきり迎えられるな。 」
「 そうね そう願いたいわ。 ふふふ〜〜 では ポテト・グラタンの
用意をしましょうかね〜〜 」
「 歓迎だ。 よろしく頼む 」
「 あら ジェロニモ Jr. は?
」
「 ああ 植木屋に回ったから ― 直に戻るだろう。 」
「 そう。 皆 お昼には戻ってくるでしょうね 」
「 呼ぶか? 」
「 いいわ。 遅くなったら ― 美味しいグラタンがなくなるだけ。 」
「 ははは そりゃいい 」
冬の陽射しいっぱいのリビングは おだやか〜〜〜な雰囲気になった。
「 ただいま〜〜 うん? くんくん・・・ 良い匂いだなあ〜〜 」
ピュンマが玄関で ハナを鳴らしている。
「 ピュンマ? お帰りなさ〜〜い ランチよ〜〜 熱々! 」
「 わほ☆ グッド・タイミング〜〜〜〜 手 洗ってすぐゆくよ 」
「 待ってるわよ〜〜 」
彼は嬉々としてバス・ルーム経由で キッチンに入ってきた。
「 お帰りなさい。 寒かったでしょう?
」
「 晴れてるんだけどさ、 風が強くて ・・・ 冷え冷えさ 」
「 ふん。 ・・・ 首尾は? 」
珈琲を淹れつつ アルベルトがぼそり、と発言する。
「 あ うん。 発注したよ。 宅急便で届くはずさ。 」
「 そう か。 それは よかった。 」
「 ウン。 予定通り だよ 」
「 了解。 」
単語に近いやり取りで 二人はふか〜〜〜く頷きあった。
「 なあに〜〜 意味深に見つめあっちゃってぇ〜 」
「 へ? な〜に言ってんだよ。
それよか オーブンの中のオイシソウなモノは なんだい?
もう 腹のムシが く〜〜く〜〜〜 」
「 うふ? ではお目にかけます〜〜 じゃん♪ 」
「 〜〜〜〜 うお〜〜〜〜 」
じゅうじゅういう熱々のグラタンが テーブルに運ばれてきた。
「 美味そうだな。 」
「 うふふ・・・ これ ベースはポテト・グラタンよ?
地元で採れたじゃがいも と タマネギ に この県の養豚場のソーセージ。 」
「 へえ いいねえ〜〜 ね 食べようよ 」
「 はいはい。 アルベルト、切り分けてくれる 」
「 御意。 」
この邸の女主人に 慇懃に会釈をすると 彼はキレキレの包丁を手に取った。
朝方 ばらばらと外出していった仲間たちは やはり ばらばらと
帰ってきた。
― ガタン。 「 ただいま 」
玄関から 低いがよく響く声が届いた。
「 ジェロニモ Jr.? お帰りなさ〜〜い 」
巨躯の仲間は 相変わらず穏やかな顔で帰宅した。
「 おう。 植木屋の首尾は どうだ? 」
「 むう。 棟梁と話をしてきた。 門松、任せろ。 」
「 そりゃよかった。 頼む。 」
「 ふふ ジェロニモ Jr. なら安心ね。 楽しみだわ〜〜 」
フランソワーズは嬉しそうだ。
「 さあ さあ ランチにしましょう〜〜 丁度 切り分けたところよ。
博士をお呼びして 」
「 ああ 今 行ってくる。 」
アルベルトは身軽に立っていった。
「 ジェットとジョーは 」
「 鉄砲玉。 」
「 ? 」
「 あ 知ってるよ。 < 出ていったきり > だろ? 」
「 さすがピュンマね〜〜 特に空を飛んで行ったヒトは 行方不明。 」
「 そのうち ふらり、と戻ってくる。 」
「 と 思うしかないわよ 」
飛び出していったワカモノ達を待たずに ほかほかランチとなった。
博士もにこにこ・・・テーブルについた。
「 ほう〜〜 これはいいなあ・・・ ポテト・グラタンかい 」
「 はい。 お気にめしまして? 」
「 うむ うむ ・・・ 」
「 フランソワーズ、料理の腕を上げたな。 美味い。 」
「 まあ よかった。 ピュンマ どう? 」
「 ん〜〜〜 いいよ〜〜 ウマい! クローブとペッパー、上手に使ったね 」
「 うふふ ♪ 」
温かく美味しい香に 皆がにこにこ・・・だ。
食後には ワイン・ゼリー を楽しんだ。
「 お これはいいな。 うむ うむ 」
ワイン通の博士も舌鼓を打っている。
「 俺 しばらく植木屋、通う 」
珍しくジェロニモ Jr. が口を開いた。
「 は?? 通うって どういうことだ 」
「 仕事、教えてもらった。 カンタンな仕事、頼まれた 」
「 え〜〜〜 バイトってこと? 」
「 年末 忙しいそうだ。 猫の手、借りたい と 」
「 うふふふ ・・・大きなジェロニモの手が 猫ちゃんの手?
なんかおかし〜〜〜〜 」
「 俺の手 でかい。 それが植木屋には向いているそうだ 」
「 ほう〜〜〜 そりゃ結構なことじゃないか。
お前さんさえよければ 植木屋の棟梁の手助けをしてきておやり。
あの植木屋は 代々続いた老舗だが 昨今の人出不足で 廃業しようか・・・
と悩んでおったのだよ 」
「 わかった。 俺、ウチの門松、仕上げられるように修業してくる 」
「 頑張って〜〜 あ ・・・ ってことはウチの掃除部隊が手薄になるわねえ 」
「 フラン。 大丈夫さ。 実はね〜〜〜 万能掃除機をさ
発注してきたんだ。 これ 僕たちからの御礼ってことで 」
「 万能掃除機?? 」
「 そ。 今の だ〇そん より進んだヤツ。 世界最新だよ〜〜 」
「 あ ら そうなの? 」
「 まだ一般販売前なんだけど 予約してきたんだ。 アレがあれば
掃除は楽々さ 手薄になった分も引き受けてくれるさ 」
「 あ ・・・ あら? 帰ってきたわ♪ お帰りなさ〜〜〜い 」
フランソワーズは デザート・スプーンを放りだし、玄関に飛んでいった。
「 ?? あ〜 ジョ― 帰ってきたのか。 門の音 聞こえたか? 」
「 いいや? あ フランだから 」
ピュンマが ちょい、と自分の耳を指した。
「 いや 平時は使わない、と言ってるぞ? 」
「 それじゃ 」
「 愛するヒトの足音 聞こえる 」
「 あ そ。 」
「 まあ いいじゃないか。 おっと ジョーの分のグラタンはあるのかな 」
「 ええ ちゃんと用意してあるはずですよ。 ・・・ ああ これだ
オーブンに入れておきますね。 」
博士の心配に ピュンマが身軽に動く。
「 アイツは 砂糖たっぷりのミルク・ティ だったな お子ちゃまだなあ 」
アルベルトも飲み物を整えてやった。
「 ― ただいま〜〜〜 わあ〜〜〜 いい匂いだなあ ・・・
お昼はなに?? 」
ジョーは リビングに入ってくるなり歓声を上げた。
「 ジョー、 お帰り。 買い物の首尾はどう? 」
「 ピュンマ〜〜 うん、ホーム・センターでさあ セールやってて・・・
ほら ぴかぴか雑巾 やら めちゃ落ちクン やら い〜〜っぱい買ってきたよ
ちょっち待ってて! 」
彼は 玄関から大きな袋をずりずりもってきた。
「 ほら〜〜〜 普段の半値とかのもあったんだ。
大掃除はこれで安心だよ。 ぼく 頑張る〜〜〜 」
「 あ あのねえ ・・・ イワンが < 万能るんば > を開発してね 」
「 「「 え!? 」 」」
博士以外の男性陣 全員が思わず声を上げた。
「 ?? なあに?? 」
「 あ いや その ・・・ 別に 」
「 そう? あ あのね ジョー ・・・ お買い物、ありがとう!
で 大掃除なんだけど 」
「 うん、全員で手分けして〜〜って 思ったんだけど 」
「 そうね、窓拭きとかは お願いしたいわ。
普通の掃除は < 万能るんば > に任せてちょうだい 」
「 ばんのうるんば? るんば って あの自動掃除機だろ?
でもアイツは行動範囲、結構制限されるんじゃないかな。
ウチは広いけど、段差があったりするし。 ほら 冷蔵庫の裏とか狭い場所なんかは
やっぱ ヒトの手が必要だろ? 」
「 あ〜 ウチの万能るんば はね、狭いトコも縦になって入ったり
壁を上って梁を掃除したりできるの。
ふふふ〜〜 ウチのは特別製でね、どんな細い場所でも 機体変形して
入り込めるの。 ベッドの下も冷蔵庫の裏も おっけ〜〜 」
「 す げ 〜〜〜 」
「 機体変形するということは 一種のロボット型掃除マシン ということか? 」
「 そうかも〜〜 ともかく掃除は < 万能るんば > が担当します。 」
「 ふうん ・・・ あ 洗剤とかは ? 」
「 最初に注入しておくの。 掃除場所の素材をセンサーで調べて 適した洗剤を
使用するようプログラムしたんですって。 」
「 へえ〜〜 イワンがねえ ・・・ 」
「 そうなの。 あ ジョーが買ってきてくれた洗剤、 使えるわ。
ありがとう〜 」
「 あ うん ・・・ それじゃ ぼくは窓拭き、担当するね。 」
「 窓拭きはね 屋根掃除とコミでジェットにやってもらうわ。
も〜〜 朝 飛び出していったきりなんですもの。 ペナルティだわよ 」
「 あは ・・・ 高いトコ、好きだもんね 」
「 でしょ。 」
「 ・・・ 大人たちはお店があるし。 ジェロニモ Jr.は 門松作り。
アルベルトは餅つきだろ? ピュンマは ? 」
「 あ〜 僕は その < 万能るんば > のプログラムをちょいと修正するよ。
この家の構造にぴったりの行動ができるように ね。
うまく組み込めば 完全自動掃除機 も夢じゃないからね〜 」
わくわく気分のピュンマは もうに〜〜んまりしている。
「 そっか ・・・ それじゃ ぼく ・・・ なにすればいいかな 」
「 え〜と そうねえ ・・・ 」
「 おい ジョー。 よかったら餅つき大会、 手伝ってくれ。
やはり 地元民のチカラが必要だ。 なにせ 俺にはイメージがまったくわかないから
な。 」
「 アルベルト! うん ぼくでよかったら! ・・・・っていっても、
ぼくだって 餅つき は 施設でやったのを見てただけなんだけど 」
「 < 見てた > んだろ? それで十分さ、手伝ってくれ 」
「 おっけ〜〜〜♪ モチゴメ、とか必要なはずだよ? 」
「 検索してくれ 」
「 おっけ〜〜 あ その前にお昼ごはん〜〜 なんかめっちゃ良い匂い〜〜
腹のムシが ぐ〜〜ぐ〜〜 だよぉ〜〜 」
ジョ― はお腹を押さえてちょいと情けない顔をした。
「 あら いけない! もう一度 温めるわ。 熱々がオイシイから 」
「 わお♪ ・・・ え ポテト・グランタン? わ〜〜〜〜 美味しそう〜〜 」
「 手 洗ってきて。 ウガイも よ 」
「 はあい。 あれ ジェットは? 」
「 < 鉄砲玉 > だそうだ 」
「 あは? ・・・ あ〜〜〜 出て行ったきり、かぁ らしいよね〜 」
クスクス笑いつつ 彼は手を洗いに出ていった。
「 ふ〜ん さすが地元民だな。 すぐにわかるんだ? 」
「 そうね。 でも ぴったりな言い回しじゃない? 」
「 ああ。 戻ったら早速窓掃除だ! 」
「 お願いね〜〜 」
「 ウチはやたら窓、多いからさ、しばらくかかり切りになるんじゃないかな 」
「 おう 願ったりさ。 ウロウロされると邪魔クサイからな 」
「 そこまで言う? ・・・ まあ 真実だけどさ 」
「 真実なら言ってもよかろう。 アイツは窓掃除担当だ。 」
ふふふ ・・・ ははは ・・・ 笑い声が盛り上がる。
年の瀬を前に 穏やかな空気でリビングはますますほんわかいい雰囲気になった。
話題の主は 午後も遅くに戻ってきた。
「 うぉ〜〜〜〜〜 帰ったぞ〜〜〜〜 開けてくれぇ〜〜〜 」
玄関の外で がなり声が聞こえる。
「 ? ・・・ ジェット? も〜〜〜 なんなのよ〜 」
「 ああ 僕がゆくよ。 やっこさん、なにかとてつもないモノを
買ってきたんじゃないかなあ
」
ピュンマが気軽に腰をあげた。
「 え ・・・ ガラクタはゴメンよ? もう粗大ゴミの収集、お終いなのですもの 」
「 見る前に ゴミ扱いはちょっとヒドイけど 」
「 だあ〜〜って。 今までどれだけの 」
「 わかったよ、 ちゃんと僕が吟味する 」
「 あ〜〜 ぼくも行く! 」
食器洗いを終えたジョーが キッチンから飛び出してきた。
「 ジョー ・・・ ジェットがなに買いにいったか知ってるの? 」
「 ううん。 でもさ 大型モール、行ったからさ 大安売り に 乗せられて 」
「 だ ね。 」
お〜〜い 開けろぉ〜〜〜 ドンドンドン ・・・
「 あ 早く開けないと ドア、蹴破るかも 」
「 あは それはいくらジェットでも無理さ。 ここのドアは 重機でも
破れないからね 」
「 そうだったね じゃあ 激突したらジェットの方が 」
「 ふふふ ・・・ バード・ストライク さ 」
「 ひどい 」
二人は笑いつつ玄関に駆けていった が。
うわあ〜〜〜〜 なに 買ってきたんだよぉ〜〜〜
わわ わ ・・・ 落ちる落ちるぅ〜〜〜 なんだよこれ
玄関からはすぐに < 悲鳴 > が聞こえてきた。
「 ちょ ちょっと?? どうしたのよお〜〜 」
フランソワーズが とんでいってみると。
「 なにを ・・・ わ あ 〜〜〜 なに これ 」
玄関のタタキは 個別包装の煎餅 やら チョコ やら ガム やら
キャンデイ やら ― そう 所謂 駄菓子 の海になっていた。
「 どうした・・・って 買ってきたんだよぉ
なにせさ〜〜〜 大安売りでさあ〜〜 シャベルですくえるだけもってけ〜って
セールでよ♪ 正月の分、買ってきた♪ 」
「 これ ・・・ 買いに行ったわけ? 」
「 あ? あ〜〜 ホントはさ〜 バイクの付属品、欲しかったんだけどぉ〜
これ 買っちまったら手、いっぱいで よ 」
「 だろうね ・・・ 」
ふう ・・・ ジョーとピュンマはため息つきつき 散らばったお菓子を集め
始めた。
「 あ これいいわ! ねえ 餅つきの日に子供達やご近所の方々に
配らない? 」
「 うん? あ〜〜 いいねえ〜 豆まきの時とかお菓子を撒いたりするし
」
「 ね? こういうお菓子なら 皆 気にしないでしょうし 」
「 うんうん 懐かしい〜〜〜とか言ってもらってくれるよ 」
「 ― オレ 喰いたいな〜〜って 思って
」
「 そうそう コドモ向きですもんね。 」
「 だ ね。 ジェット サンキュ〜〜 」
「 ・・・ オレの ・・・ 好きなモン ばっかで ・・・ 」
「 うん 皆 喜ぶよ〜〜 これだけあれば たくさん撒けるし 」
「 そうね♪ どうぞいらしてください、お土産ありますって
町内会の方たちにもお知らせするわ 」
「 おお それはいいのう〜 ワシも煙草屋のご隠居サンに声をかけておくよ 」
「 お願いします〜 あ ジョー、このお菓子、袋にいれて納戸にしまって
おいてね? 」
「 オッケ〜〜 きっちり結んでおくね。 」
「 お願いね〜〜 」
「 ふん お前もたま〜〜には役に立つモノを買ってくるんだな 」
「 ・・・ あ オレ ・・・ 」
「 ほら 手を洗ってきて? 遅くなったけどランチ、残っているわよ〜 」
皆 わいわいそれぞれの < 仕事 > に取り掛かった。
「 ・・・ オレ ・・・ 食べたかったんだァ ・・・ 」
玄関に取り残されたのっぽの赤毛の呟きは だ〜れにも聞こえなかった・・・らしい。
ギルモア邸では 着々と新年を迎える準備が進んでゆく。
掃除もイベントの準備も 皆 楽しんでいる。
― そんなある日 ・・・
フランソワーズは 小走りに買い物から帰ってきた。
「 ジョー。 時間 ある? 」
「 お帰り〜 え? あるけど ・・・ 餅つきの準備はなんとか終わったし 」
「 そう よかった! あのね ボランティア おねがいしたいの
」
「 ボランティア? 」
「 そうなの。 今日 商店街の魚屋さんで聞いたんだけど ・・・
猫さんやわんちゃんのシェルター のお手伝い 」
「 しぇるたー ? ・・・ 避難場所?? 」
Last updated : 12,19,2017.
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なんか ハナシがだんだん広がってきた・・・かも。
彼らが餅つきしたら 臼は地面にめり込むかも ・・・